ワークショップ「カフェをつくろう」
SCOP TOYAMAへの実装に向けた高校との協働

Workshop for SCOP TOYAMA with a Local High School

富山県富山市

SCOP TOYAMA(富山県創業支援センター/創業・移住促進住宅)の中心的存在であるカフェのインテリアデザインについて、富山工業高校と3年度に渡るワークショップでつくりあげた。ワークショップの企画・テーマ設定や運営は設計者チームが担当し、高校教員や地域の家具メーカーの協力を得ながら、歴代の高校生たちがカフェ等の家具、照明、グラフィック、エクステリアの各プロダクトを製作した。
この取り組みの効果としては、①地域の伝統素材の再認識と新しい活用、②高校の枠組みを利用したメンテナンスの枠組み構築、③地域社会からの持続的な関心の醸成、が挙げられ、同時に進めていた設計内容にも色濃く反映された。
最も重要なことは、このような実践が「若者が未来の生活を提案できる」という気運をつくりだし、地域への愛着やプライドを生み出すことに繋がると考えている。

カフェ内観。ペンダント照明(Ori)、4種類のイス(手前から、結、Curve Chair、緒、GATHER)、テーブル、および富山の山と海をモチーフにした壁面グラフィックをデザイン、製作した。設計・監理者としてはワークショップでのデザイン状況を睨みながら、ベンチの形状や色彩、配線ダクト位置、空調関係の配管位置調整など、本工事側でなすべき調整を行った。
隣接するイベントスペースにも、このためにデザイン・製作された照明(紙風船ランプ)が設置されている。2種類の五箇山和紙を使い分け、照明配置には明確な幾何学が採り入れられている
チャレンジショップ(シェアキッチン)にも、ワークショップで製作したテーブルが設置されている。製作するアイテムはあらかじめワークショップの企画・運営を担当した設計チームがリストアップした
ワークショップは設計者選定プロポーザルで提案し、4年度に渡る。初年度は企画・導入、2年目は試作品製作、3年目は前半に試作品の改良、後半に本製作をおこなった。4年目は壁画の製作や各種プロダクトを設置した。本事業が2017年の建築甲子園で優勝した富山工業高校のリノベーションプランに基づいていることから、ワークショップは同校と行った
2020年11月の「みんなでカフェをつくろう」出題時の様子。設計チームの仲俊治、宇野悠里(建築)、岡安泉(照明)、藤森泰司(家具)、中尾千絵(グラフィック)が担当
出題に続いて、カフェとなる空間を見学。梁下端がFL+1800であったが、木製床組を解体することで床レベルを65cmほど下げることを説明(*)
グラフィック班の生徒とやりとりをする中尾氏(*)
中間講評会での様子。照明の配置計画を確認する岡安氏(*)
セードの固定方法を確認する(*)
中間講評後にグループに分かれてエスキスをする藤森氏(*)
試作品の発表会は、富山市民プラザ(槇文彦設計)で行われた(2021年2月)。(コロナ禍のため、担当の学生以外は着席したまま)(*)
3年度目は、試作品のブラッシュアップから始まった。コロナ禍で移動がままならない状況のため、オンラインでのエスキスも多用した(*)
椅子に関しては強度・耐久性の向上と座り心地の両立が大きなテーマであった。右はブラッシュアップから参画頂いた地元の家具製作所の中嶋誠氏(*)
マテリアルハンティングとして城端しけ絹や五箇山和紙などの生産者を訪問したことは、地域の伝統的な素材を深く知る機会にもなった(*)
試作品のブラッシュアップを進めながら、照明、家具、グラフィックの各班の作業を1枚の図面に統合。色彩計画を中心に議論が深まる
製作するプロダクトの担当を超えて、激論を交わし、デザインの細部を決定した(*)
迎えた最終発表会。全てのアイテムが教育会館に勢揃いした(2022年2月)。試作品と完成品が並べられ、高校生達がデザインのポイントやブラッシュアップした部分などをプレゼンテーションした(*)
施工者の協力を得て、高校生が先生方と一緒に、照明を吊り下げるヒートン位置を墨出し(*)
4年度目、先輩が完成させたアイテムを、いよいよカフェに搬入。新3年生が、ペンダント照明と机、椅子の設置まで、丁寧におこなった(*)
コモンテラスにも、製作したベンチを据え付けた(*)
カフェと同じフロアにラボ(工房)をつくった。家具のリペアに後輩達が対応する
リペアだけでなく、ラボを高校生の活動拠点にするような取り組みとして、地域の子どもたち向けのものづくり教室(2023年8月)(*)
3年度目の冒頭では、コピーライターの吉岡氏を招き、愛称のブレストを行った。この後、高校生らに呼びかけて愛称を募集し、県庁での審査の結果、「SCOP TOYAMA」となった(*)
設計・監理者が愛称とロゴ策定のプロセスに関与できたことは、3棟2工区に分かれた工事であっても、統合的なVI展開に繋がっている

発注者:富山県
企画・運営・デザイン監修(高校生ワークショップ業務委託):
 建築 仲建築設計スタジオ
 照明 岡安泉照明設計事務所
 家具 藤森泰司アトリエ
 サイン ちえのわデザイン
ワークショップによるデザイン・製作:富山工業高校 高校生の皆さん、教員の皆さん
技術指導:中嶋工芸社中嶋誠氏
(*)富山工業高校提供の写真